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それでも世界は続いていく終

ミンサガグレクロ皇女クローディアの話

そのうち書けなくてはしょってしまったシーンとか書き足したいなあ





終、続く世界

「皇女がいないぞ!」
「そんな馬鹿な話があるか!よく探せ!」
「しかし寝所ももぬけの殻だ…まさか、コルネリオ殿の企みはすでに皇帝派に…」

温和なだけで政治的に無能な皇帝と、皇室に戻ったばかりで実力のない皇女の暗殺。皇女は邪神サルーインを倒した英雄の一人とはいえ、か弱い女。雇い主であるローバーン公いわく、彼女には常に皇帝派の息のかかった護衛たちが付き従っており、本人は争いごとが不得手な性質だという。これまでも何度か暗殺者を返り討ちにされたが、その護衛たちの働きがあってのものだ。圧倒的な戦力で闇討ちにすれば必ず息の根を止めることができるという。暗殺者たちは知る由もなかったが、それは旅に出て間もない頃のクローディアしか注視していなかった者の勘違い、侮りに他ならない。暗殺者たちは皆、リスクは高いが報酬の良い仕事だと疑わなかった。それゆえ想定外の事態に暗殺者たちは動揺していた。

「お探しの方はこちらでしょうかー!」

戸惑うばかりで周りへの注意を怠った暗殺者の背後に、まさに探していた皇女クローディアとその護衛ジャンの姿があった。
それに気がついた時にはすでに、サルーインをも倒した矢が打ち込まれ行動不能となっていたが。自身の剣を振るうこともなく決着となり、ジャンは一人ではしゃぐばかりだ。そんな能天気な彼に、クローディアは眉をひそめる。
「あんなに言ったのに結局ふざけてばっかり。もう行きましょう。」
「おっとそうでした、一刻も早く皇帝陛下のもとへ向かいましょう。とは言え、この暗殺者集団の混乱っぷり…恐らく親衛隊がうまくやってる頃ですね。」
ジャンがのんきに吐いた言葉にかぶさり、何かを壁にたたきつけるような大きな物音がした。まさに話に上げていた、フェル皇帝の寝所からだ。さすがのジャンの表情にも緊張が走る。二人は顔を見合わせると、真紅の絨毯を蹴って走り出した。
「皇女様!ジャン総隊長!」
通路の途中、昼間に警備隊事務所で話した若い兵士が立っていた。
「状況は!」
ジャンが切羽詰ったように問いかけると、予想に反して兵士は表情を和らげた。
「大丈夫ですよ!侵入者はもう…」
その言葉を待たずに、すぐに杞憂だったとわかった。彼の背後に、暗殺者の男が力なく壁に背を預けて倒れているのが見えた。他にも同じような装束を身にまとった男たちが転々と倒れている。暗殺者集団の周りは警備隊と親衛隊の面々が取り囲んでいる。
その中には宮殿内の警備に当たっていたネビルと、
「グレイ!」
うっとうしそうにアサシンの仮面をはずしているグレイがいた。短くなった銀の髪がさらりと、汗ひとつかいていない涼しげな肌にかかった。
「英雄グレイが暗殺者の軍団に紛れ込んでいて、共に奴らを挟撃してくださったんですよ!」
ジャンからグレイのことを散々聞かされていた兵士達はみな、まるで伝説上の英傑に出会ったかのように興奮していた。しかしそんな彼らにかまわず、ジャンはずかずかと大きな歩幅でグレイに詰め寄った。
「おい君!ふらっといなくなって連絡のひとつもよこさないで!」
それはクローディアも問い詰めたいところだったが、思うより早くジャンに言われてしまい口をつむぐ。
「モニカには連絡を取っていたぞ、お前に話せばまたローバーン公派に足元を掬われかねんので口止めしていた。」
「な、なんだと!まだ前のことを根に持っていたのか!」
「当然だろう、密偵に向かって逆に人質にされるような奴は信用できん。」

まだジャンがクローディアとグレイを引き合わせて間もない頃、危機に陥ったジャンを二人で助けたことがあった。ジャンはその件に関しては兵士達に話していなかったため、これまでジャンを信頼していた彼らも若干不安げな表情を隠せないでいる。味方となってくれるものが一気にいなくなっていくのを察して、追い詰められたジャンはムキになって言い返そうとした。

「なっ…!」
「そんなことより…」
しかしグレイの言葉に怒気がこめられているのを察し、気圧されてしまう。当然他の兵士達や、ネビルでさえ止めることはできなかった。宮殿内に残党がいないか見回りをしてきた部隊だろうか、数名の兵士達も明るい表情でこちらに駆け寄ってきたが、すぐに重たい空気を察して表情を固くした。
「何故クローディアを前線に出した、まさか伝令の内容も理解できないほどの馬鹿だったとはな。」
「それは俺の責任じゃない!断じて!」
「ほう、なら何故今回のことが漏れたんだ。言ってみろ。」
それは…とジャンが短く呟いてから、
「は、鳩のせいで…」
とうなだれながら続けた。その主張は事実だったが、物静かでありながら鬼神のように怒るグレイと、情けなく縮こまるジャン。この状況でジャンを弁護できるものは誰もいなかった。
「…どんな言い訳を垂れるか見物だったが、まさか鳥のせいにするとはな。」
「本当なんだって!おい皆も説明してくれよ!」
ジャンはすがるような目で周囲の兵士達を見たが、皆目を背けてしまった。クローディアだけが、二人のやり取りをじっと見ていた。

今回のことをクローディアに隠し通そうというのは、他でもないグレイの望みだったのだ。それなのにクローディアは、自分で戦わなくてはと事態を背負い込もうとするあまり、彼の思いを無下にしてしまうところだった。彼は離れ離れになってまで、自分のことを守ろうとしてくれていたのに。
グレイにきちんと謝らなければ。そう気持ちが急くばかりで、なかなか会話に入り込めないでいた。

ジャンはがっくりとうなだれると、恨みがましげに呟く。
「どうしてそんな言い方ばっかり…俺は本当に、君はどこ行ったんだろうと心配して…」
「俺はお前のことはどうでもいい。」
「そんな…!」
いよいよ脱力しきり絨毯に手をつくジャンを尻目に、グレイの氷のような瞳は周囲の兵士達を滑るように見回した。

その瞳が、クローディアのもとで留まった。グレイが何か言いたげに薄く口を開く。

「まだまだ積もる話もあるだろうが、少し良いだろうか。」
寝所にて警護されていたフェル皇帝の穏やかな声が、辺りに響いた。全員皇帝へ向き直り、背筋を伸ばし、めいめいに深く頭を垂れた。
「まずは、暗殺者集団の迎撃、まこと大儀であった。」
言いながら、兵士一人ひとりを見回し、その暖かなまなざしがクローディアにも向けられる。
「お前も怪我はないな?」
「はい。」
フェル皇帝は満足そうにうなずく。続いてジャン、ネビルを交互に見た。
「お前たちにはいつも、助けられてばかりだな。本当に感謝している。」
クローディアと同じ深い琥珀色をした優しい瞳は最後に、グレイの顔を見た。
「前に私が病に伏せたとき、クローディアとともに気のディステニィストーンを携えてきてくれた冒険者殿だな。軍にいた頃から、帝国のために良くぞ働いてくれた。」
「えっ!グレイのこと覚えてらっしゃったんですか!」
ジャンの気安い言葉にも、皇帝はうなずき丁寧に答える。
「私に力を貸してくれた者の顔は、皆覚えているよ。」
普段誰かに敬意を表することがほとんどないグレイだが、珍しく会釈で返した。

フェル皇帝は帝国外の人間や、その地位を狙わんとしている者から無能だと呼ばれるが、実際にはただ優し過ぎるだけなのだ。国民は彼にとって所有物ではなく、軍隊は彼にとって駒ではなく、ただ皆等しく同じ人間であった。
本当に、この父親の元に戻ってきて良かった。クローディアはそう心の中でかみ締めていた。

「貴公には改めて礼をしよう。だが、今日のところはもう休みなさい。私も疲れてしまったよ。」
フェル皇帝はそう言って気さくに微笑む。グレイは首をあげると、もう一度深く会釈をした。
「クローディア、グレイ殿を貴賓室に案内して差し上げなさい。」
「はい、お父様。」
「お前もゆっくり休むように。」
慈悲深い皇帝はジャンにも優しい気遣いを示した。
「モニカも戻ってくるようローバーンへ迎えに行ってやりなさい。」
「え!こんな深夜にですか!私も疲れたんですけどねー。」
それは敵対する派閥の諜報員として働き続けたモニカに、一刻も早く会って労ってやれという意図があっての指示だった。しかしジャンには全く伝わっていないらしい。周囲の兵士達が、彼に気づかれないようにこっそり肩をすくめた。
「いいからご命令通りにしろ、馬は用意する。」
あまりにも察しの悪いジャンを、ネビルがなかば強引に退室させた。彼が会釈をして立ち去った後、一斉にため息やら呆れ笑いが溢れた。一気に場の空気が暖かくなるのが感じ取られる。皇帝もやれやれ、といったように首を振ると、改めてクローディアとグレイに目をやった。
「彼は相変わらずの大物だな。さあ、もう行きなさい。」
「後の警備はお任せくだされ、皇女様。」
その言葉に続くように、ネビルも促してくれる。周りの若い兵士達も皆、にこやかに微笑みうなずいていた。
「ありがとうございます。それでは、失礼致します。」
クローディアが礼をして踵を返すと、グレイもそれに続いた。


久方ぶりの再会を果たした二人に気を遣ってか、見張りの配置は最低限にされていた。貴賓室へ続く通路や、その扉の前には誰もいなかった。
彼と突然二人きりになったことが改めて、クローディアを緊張させていた。もしもまたグレイに会えたら、言いたいことがたくさんあったはずだった。しかしいざ本人を目の前にして、何の言葉も出てこない。素直に再会を喜びたい、そして謝りたい。しかしここがエリザベス宮殿内で、自分は今やバファル帝国の皇女という立場である、という事実も彼女を無口にさせていた。彼は見慣れたいつもの調子で、沈黙を一向に気にしていないらしい。後ろ髪は短くなってしまったが、片目を隠すように伸びた前髪で表情が見えづらく感じるのも、懐かしい感覚だった。
貴賓室の鍵を開け、グレイを招き入れる。後ろ手で扉を閉めると、完全に二人だけの密室となった。無理に背負おうとしていた皇女という重責が、肩からすとんと落ちる。ただのクローディアという一人の女に戻る。

張り詰めていた糸が切れるように、これまでの彼との旅の記憶があふれてきた。
初めて会った日のこと。ジャンに紹介された彼はこちらには無関心そうに見えたが、しばらく話すうちに、単に無駄話をしたくないだけで人嫌いではなさそうだと思った。
彼に連れられて海の見える街へ、ガラスでできたような美しい町へ、そして何もない村へ赴いた。自分に護衛に守られるだけの旅ではなく、広い世界を見るための冒険をさせてくれた。
冷たい人間に見えることも多かったが、思い出されるのは、楽しかったことばかり。
こんな人のことを、どうして信じて甘えることが出来ないでいたのだろう。どうして、遠ざけようとしてしまっていたのだろう。

「本当に、ごめんなさい。」
唇からそう自然に漏れる。あの日隠した涙が、一粒こぼれた。
「どうかしたのか。」
心なしか優しい声色に、いよいよ涙が堰を切ったようにあふれる。グレイは小さく笑い、クローディアに向き直るとその赤みのさした頬を両手で包んだ。親指で涙をぬぐわれる感触があった。
「…手袋、汚れるわよ。」
「構わん。何故泣く。」
「ごめんなさい、でも…」
その大きな手をさらに包むように、クローディアの華奢な両手が添えられる。
「私は、何もわかっていなかった。あなたが一緒に戦っていてくれてたなんて。」
クローディアは長いまつ毛を伏せた。グレイは頬に優しく添えた手をそのままに、やんわりとつねってみせる。
「ジャンにはああ言ったが、考えてみれば、うちのお姫様がただ大人しくしているわけがなかったな。」
彼なりの皮肉めいた優しい言葉が、クローディアの胸に染み入るように響く。グレイはそこで言葉を切ると、
「…無事で良かった。」
そう搾り出すように呟いた。それはとても重たい言葉だった。もう、自分の命は自分ひとりだけのものではない。これからのバファル帝国のため、そして何より、一番に身を案じ味方でいてくれたグレイのためにも、生きていかなければと強く思う。
「ありがとう。」
それだけ言うと、クローディアは大きな手をほどいて彼の胸に顔をうずめた。ほんの少し驚いたような間を置いて、それから背中に腕が回されるのを感じる。
サルーインを打ち倒したあの日、自分を守ってくれた場所に帰ってくることができた。恐ろしいほど冷たくなっていった大きな体躯から、今は規則的な鼓動が響いてくる。それが何よりの幸福だと思った。
「お帰りなさい。」
「…お帰り、クローディア。」


ローバーン公は度重なる皇女暗殺の策謀、フェル皇帝呪殺未遂など皇室に対し叛逆を繰り返してきた。にもかかわらず、確実な証拠を残さずのらりくらりと逃げ延びてきた。しかし今回の暗殺者軍団侵攻によりいよいよ本格的に馬脚を現す形となる。
ローバーンの街の十分な復興が果たされないうちに急ごしらえに暗殺者軍団を用意したためだろう、南バファル大陸ではローバーンでしか扱っていない南方鉄の武器が暗殺者達から大量に押収されたのだ。追求したところ、ローバーンの鍛冶屋からコルネリオ名義の発注書も見つかり、決定的な証拠となった。金で雇われただけでローバーン公派にはなんの忠誠心もない暗殺者たちが、あっさり口を割ったことも大きい。

「これまで密かに動いていた割には、ずいぶんあっけない終わりね。」
「もともと、最後までうまく立ち回れるような大人物でもなさそうですし、それだけ切羽詰っていたのでしょう。」

フェル皇帝は自分の妹君であるマチルダと、その夫コルネリオを処罰することには非常に胸を痛めていたようだ。しかしクローディア達の忠言と、何より被災したローバーンの民を救うべき立場にありながらその任を放棄したという揺るがない事実により、いよいよ心を鬼にした。その身元をブルエーレへ移し、そこからイナーシーに浮かぶ無人島への流罪に処したのだ。荒廃したまま放置され、主までいなくなったローバーンの街はバファル帝国直轄領となり、速やかに物資が援助されることとなった。

「魔の島行きになれば良かったのに。」
「あそこではちょっと暮らせませんよねえー。」

グレイは今回の働きと、何より邪神サルーインを倒した五人の英雄の一人としてフェル皇帝や帝国関係者、そしてメルビルの民から賞賛された。本人はいたく迷惑そうだったが、クローディアとしては彼が人々から当然の評価を受けたことが嬉しく感じられた。
皇帝は彼にもメルビルに留まり、ジャンと同様にクローディアのそばについていてもらいたいと考えていたようだ。しかし帝国内での地位など、彼が望むわけもなかった。そこで「有事の際に動いてもらいやすいように」という、本当に形だけの役職である名誉総隊長に任命された。グレイは好きにしろ、と興味がなさそうに言いながらも辞退はしなかった。

「で、形だけとはいえバファル帝国軍に帰ってきたって言うのに、あいつはまたどこに行ったのでしょうね?」
ジャンはバルコニーから身を乗り出すと、メルビルの城下町に見えるはずのないグレイの姿を探した。
「もうここまでくると、自由でいるのが好きというより放浪癖持ちなのではと…」
しかしクローディアは手すりに背を預けたまま目を閉じた。優しい春の風が、彼女の栗色の髪をゆるりとなびかせる。
「大丈夫よ、どこにいてもきっと帰ってくるわ。」
小さな黄色の鳥が一羽、クローディアのもとへ舞い降りてきた。バファル帝国に戻って間もなかった頃の彼女は、いつか森の動物たちや神々の力に頼らないようにしなければならない、と無理に自立しようとしていた。しかしそうした味方がついているからこそ自分でいられるのだと、今なら素直に思うことができる。この小鳥も、彼女の使いとなりメルビルの外を見てきてくれていたのだ。黄色の小鳥が歌うように小さくさえずると、クローディアの表情がほころんだ。
「…ほら、ね。」
小鳥は抜けるような青い空へと飛び立っていく。クローディアはまぶしさに目を細めながらも、小鳥の行く先を見守ろうとする。ジャンもそれにならって、大空を見上げた。

こんなに穏やかな気持ちで空を見るのは、あの冒険の日々以来だったように思う。もうあの頃には戻れない、自分の出生も、運命も、何も知らなかったあの日には。
そんな日々を懐かしく思ってしまうようなことが、この先にも何度も起こるだろう。しかし今は、それでも大丈夫だと思う。
ふいに、宮殿の中から呼び声がした。
「準備が出来たのかしら。」
二人はは連れ立ってバルコニーを後にした。そして、ぱたん、と乾いた音を立てて扉が閉じられた。


これは、この先もずっと続いていく、クローディアの物語のほんの数ページ。
しかしこの数ページのできごとが、バファル帝国皇女として生きようとするクローディアの背中を、強く押してくれる。
いつか聞いた吟遊詩人のリュートの音色が、かすかに聞こえた気がした。
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寺島ロシカ

Author:寺島ロシカ
テイルズオブデスティニー2(ジュハロ)、ロマンシングサガ・ミンストレルソング(グレクロ)、ドラッグオンドラグーン2(ノウェエリ)、ブレスオブファイア5(リュウリン)とかそんな話ばっかり。
鳥海浩輔さん、千葉一伸さん、皆口裕子さんの三柱神を崇め奉る。

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