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それでも世界は続いていく③

ミンサガグレクロ皇女クローディアの話
ジャンは書いてて楽しい本当に楽しい超いいやつ。





三、嵐の先ぶれ



バファル帝国の民がみな皇女クローディア擁立を喜び沸き立っている一方、メルビル警備隊は来る日に向けて密かに警戒態勢についていた。ローバーン公派の監視を続けていた諜報員モニカから、火急の知らせが入ったのだ。内容は当然のこと、ローバーン公コルネリオとその妻マチルダの不穏な動きについて。
二人はこれまでも皇帝フェル6世を失権させんと暗躍してきたが、いよいよクローディアという正当なる後継者が現れた今、なんとしても彼女が実権を握る前に暗殺しようと躍起になっているのだ。邪神サルーインとの戦いによりイスマスを中心に大地が崩落しし、その影響で領土の大半に多大な損害を受けたことも、彼らを追い詰め焦らせていた。

「英雄グレイがいればなあ…」
警備兵のひとりが剣を抜き、軽く素振りをしながらぼやいた。
「そんなことを言っても始まらないだろう。」
それを聞いた別の兵が、生真面目に制する。しかし、彼の目にもこれからの戦いに対する不安の色が見えた。
「あの方が帝国兵でなくなったのは、もうずいぶん昔の話だ。今だって、行方をくらませたきりじゃないか。いくら旧友のジャン総隊長がいるからって救援には…」
「おい、お前もその辺にして置けよ」
別の兵がキョロキョロと周りを見回しながら、その言葉をさえぎった。それ以上言えば、現在メルビル警備隊総隊長にしてクローディア直属の護衛であるジャンには、役不足だといっているようなものではないか。
「そーーーーなんだよなあーーーーーーーーー」
そんな兵士の気遣いを吹き飛ばすような、ため息交じりの大声が警備隊詰め所に響き渡った。思わず兵士たちの背筋が反るようにピンと伸びる。
「ジャ、ジャン総隊長!」
「お疲れ様です!総隊長!」
「おいおい、そういうのやめてくれって言ってるじゃないか。気楽にしてくれ、ちょっと立ち寄っただけだよ。」
ジャンはひらひらと手を振ると、ぼやいていた兵士達の間に入って気安く二人の肩に腕を置く。
サルーイン討伐の旅から戻ったジャンは、巨大化したメルビル警備隊を統括する総隊長という座に任命された。サルーイン戦役より前から帝国親衛隊隊長であるネビルと共に、メルビルを守る二つの柱のような存在となっている。
彼は世界を救った英雄の一人として兵士達から尊敬されているが、その軽薄な振る舞いは一兵卒であった頃と何も変わらない。その態度のせいで、奢らず飾らない人柄を評価する者と、本当にこの人物が邪神討伐を果たしたのかと半信半疑になる者と二分する結果となっているが。もっとも、本人は一向に気にしている様子はない。
「そりゃあ、あんなコソコソしたお方にうちのクローディア様がやられるわけがないさ。俺達が絶対そんなことにはさせない。だけどあいつがいれば、戦況はもっと楽になっただろうになぁ」

ジャンはこれまでも、用もなく警備隊の詰め所に入り浸っては、兵士達にグレイのことを語って聞かせていた。共に帝国軍に所属していた頃、彼との組手で勝てたことがほとんどなかっただとか。猪突猛進な自分のことを、なんだかんだ言いながらフォローしてくれたとか。彼が帝国軍から離れてしまったのも、ジャンが犯したミスを自らかぶり責任を負わされたからだとか。

それはまるで、邪神の脅威が去ったこの世界を大親友ーと、ジャンは一方的に思っているーグレイと共に生きられない寂しさを埋めるかのようにも見えた。語り口はいつも明るくおどけた調子だったが、どこか瞳は遠く過去を見ているようだった。

「ま、その分新人のお前らが頑張ってくれよな!クローディア様の目に留まるチャンスだぞ!」
重たくなった空気が、ジャンのカラッとした声色で少しだけ軽くなった。兵士達の表情も自然とほころぶ。
「そんなこと言ってると、またモニカさんに叱られますよ。」
「この間も、余計なこと喋ってないでクローディア様をお守りすることに専念しなさいーって言われたばかりだそうじゃないですか。」
「あ!お前たちどうしてそのことを!」
にぎやかに談笑する兵士達が、再び背筋を伸ばす事態となった。
「私がみんなに話したからよ、ジャンはすぐに調子に乗るから、あなた達がしっかりしてねって。」
決して大きくはないのに、凛とした張りのある声が警備隊に響いた。今度はジャンも兵士たちと揃って姿勢を正している。
全員の視線の先には、深緑のドレスに身をまとった麗しき皇女、クローディアの姿があった。
「く、クローディア…様…」
「今度のことを相談しようと思っていたのに、また警備隊のみんなの邪魔をしていたのね。」
「こここ、今度のこと、とは…?」
とぼけても無駄よ、とクローディアの目が厳しく釣りあがる。そんな、まさかな、とジャンは心の中で呟いた。
「ローバーン公派が不穏な動きをしているようね。私には秘密にしようとしていたみたいだけど」
そのまさかであった。モニカからの知らせには、ローバーン公の件と共に、もうひとつ厳重に記されたことがあった。皇女クローディアの身の安全についてだった。

これまでも強敵相手に果敢に戦ってきたクローディアのことだ、コルネリオ達の手によって再びバファル皇室が脅かされると知れば、自らも戦いに参加すると言い出すだろう。しかし彼女の立場は当時とは違うのだ。正式に皇女となった彼女は、これからのバファル帝国のために不可欠な存在である。彼女を絶対に守りきるためにこのことは伏せておき、ローバーン派が潜入してくる深夜に密かに返り討ちにするという作戦が立てられていたのだったが。

「何故そのことを?!」
「これからは、私への隠し事に伝書鳩は使わないことね。」
「鳩!」
「彼女に聞いたの。そんなに急いで、どこから来たのって。そうしたら、南西の陰気な町からだって。それでローバーンのことだろうと思ったのよ。」
ジャンは思わず膝から崩れ落ちてしまった。自分たちは、このクローディアという女性を甘く見すぎていたのかもしれない。クローディアは可憐な見た目とは裏腹に、いつでも自分の運命と向き合い、逃げ出すことなく強かに戦ってきた。そんな彼女に対して、隠し通して事を解決しようだなんてかえって無礼だったかもしれない。
「それで、答えは?」
ジャンは立ち上がると銀のつんつん頭をくしゃくしゃ掻き、改めて彼女に向き直って、いつものように笑って見せた。
「ともにバファル皇室を守りましょう!やはり、あなたがいなきゃ始まらないさ!」
邪神サルーインを倒した英雄であり、敬愛する皇女が共に戦ってくれる。そのことが、警備兵達の士気をこの上なく鼓舞した。誰からともなく声を上げ、手を取り、剣を掲げた。
「メルビルの、そしてバファル帝国全土の太平のために!」
「陰険領主を叩き出せ!」
「今度こそ、あいつの尻尾を掴んでやるんだ!」
勢いづく若い兵士達に、クローディアの表情もほんの少し和らぐ。
「頼もしい味方に恵まれて嬉しいわ。」
クローディアの言葉に、自然と兵士達は耳を傾ける。
「サルーインに操られた魔物達との戦いの際、ローザリア帝国のナイトハルト殿下はローバーン公の動きを警戒して、エスタミルへの増援を思案されたと言うわ。」

ジャンは、先日のアルベルトとの会談を思い出していた。各国が争わず歩み寄れていれば、先の戦役での被害はもっと抑えられたはずだという彼の言葉を。長く続いてきた戦いを、またひとつ終わらせる時が間近に迫っているのだ。

「自分達の手で内乱を治めることは、ローザリア帝国と対等な立場を築き、和平交渉を進めていく大きな一歩となるでしょう。」
クローディアはいったん言葉を切ると、兵士一人ひとりの希望に満ちた顔を見つめた。最後に見たのはジャンの顔。彼の表情もまた明るいものだった。
「この国の未来を、ひいては世界の未来を作るのは私達よ。戦いましょう。」
再び、詰め所に兵士達の鬨の声が響いた。誰もがみな、自分達の勝利と栄光を信じてやまなかった。そのために全力を賭することを厭わなかった。


「だって、もうあの人は、私の事を守ってはくれないのだから。」


その喧騒の中で、クローディアの消え入りそうな呟きを聞き取ったものは、誰もいない。
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プロフィール

寺島ロシカ

Author:寺島ロシカ
テイルズオブデスティニー2(ジュハロ)、ロマンシングサガ・ミンストレルソング(グレクロ)、ドラッグオンドラグーン2(ノウェエリ)、ブレスオブファイア5(リュウリン)とかそんな話ばっかり。
鳥海浩輔さん、千葉一伸さん、皆口裕子さんの三柱神を崇め奉る。

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