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それでも世界は続いていく①

グレクロ、皇女クローディアの話
なんか無駄に長くなりそうな予感。
短編をたくさん書くような気持ちでちまちま書きすすめないと、もたないぞ







一、おとぎ話の続き

かの騒乱の傷はまだ癒えず、人々の記憶にも新しい。
神々の父エロールにより倒された、邪神サイヴァより生れし破壊の神、サルーイン。
暴虐の限りを尽くしたサルーインは、銀の戦士ことミルザにより封じられ、長らく眠りについていた。
しかしその封印は時が経つにつれ弱まり、自身は動けずとも、ミニオンと呼ばれた使い魔をして世界を危機に陥れるまでに力を取り戻し始めた。
魔物たちが勢力を奮い、いよいよ破壊神の復活が間近にに迫った時、五人の英雄が立ちあがった。
五人の若者は、時に励ましあい、時に切磋琢磨し、破壊神に対抗する力と、多くの人々の信頼や協力を得た。
それでも、困難な旅路であった。皆、自分が犠牲になってでも宿願を果たすつもりであった。
しかし!マルディアスの神々は英雄たちに味方した!銀の戦士ミルザの悲劇は、繰り返されなかった!英雄達は五人とも生きて邪神討伐を果たしたのだ!
英雄達は、邪神の脅威が去ったこのマルディアスで、今この時も生きている。
生きて、人々と共に未来に向かって歩み始めている。
この広大にして伝統あるバファル帝国の時期君主、皇女クローディアがそのひとりである!

リュートの音色がやんだ静寂の後、吟遊詩人は真剣味を帯びていた表情をふわりと崩した。
「…と、メルビルのパブで弾き語りをしようと思うのですが、いかがでしょうか?曲も、あなたをイメージして新しく作ったのですよ。」
吟遊詩人の柔らかな視線の先では、煌びやかなドレスを纏った女性が豪奢な椅子に腰かけていた。深い茶の髪が天窓からの光を受けて神々しいまでに輝いている。焦げ茶の瞳はやや表情に乏しいが、決して吟遊詩人の来訪を疎んでいるわけではなく、ただ彼女の育ちのせいである。

詩人の語りの中でうたわれた皇女、クローディア。彼女は帝国の権力争いに巻き込まれ、生まれて間もなく父である皇帝フェル6世のもとを離れた。自分の素性を知ることなく、捨て子として迷いの森の魔女や森の動物たちに育てられたのだ。
彼女は外の世界を知るために旅に出て、世界が少しずつ破滅に向かっていること、そして自分が本当は何者であるのかを知った。そして、父であるフェル皇帝が政権争いを孤独に生き抜いていることを知った。
彼女はサルーインを倒す旅の最中、ずっと悩み続けていた。この旅が終わったら、これまでのように迷いの森の番人として、森の神シリルの巫女として生きていこうか。それとも、自分がバファル帝国君主の正式な後継者であると名乗りを上げ、皇女として生きていこうか。
本心では、破壊神を倒そうということ自体自分の身には過ぎたことだと思っていた。自分が大帝国の君主となることに対しても同様に考えていた。森の魔女オウルから本当の素性を聞かされた後も、自分はただの森の番人であり、ただの女であるという気持ちに変わりはなかった。
しかし、そう考えを固めれば固めるほど、脳裏をよぎってしまうのだ。
バファル帝国で起きたある事件を解決したことで、皇帝の御前に赴き褒美を授かった時のこと。父は自分のことを、かつて手放した実の娘だと気づいていた。自分が生きていたことを心から安堵し、父親らしい言葉をかけてやりたいと思っただろう。しかし、父にはそれができなかった。クローディアの素性を暴いてしまえば、政権争いから離れて命を脅かされることもなく生きていた自分を、再び危険にさらすことになる。そうして父は自分を庇って、たった一人で政敵に晒され続ける日々を送ることにしたのだ。
あのときのフェル皇帝の表情を思い出すたび、父のそばにいたい、支えてあげたいという感情も湧きあがってくる。そしてその気持ちは、それまでに抱いたことのない興味をももたらした。その父が愛した、自分の生みの親である母親がどのような人だったのか知りたいとも思うようになったのだ。

そうしてクローディアはメルビル宮殿へ、権力闘争の渦へと赴いたのだ。
とはいえ、今はまだ施政すべてを任されているわけではない。皇帝のそばについて大臣たちとのやり取りを見学したり、皇帝が休息をとっている間に要人との面会など代理する程度だ。

「…大げさすぎないかしら」
クローディアはそう短く答えた。当時は成り行きで行動を共にするようになった仲間たちと、とにかく生き延びること、世界を破滅させない事だけを考えて戦っていた。クローディアにとってはただそれだけのことだった。しかし詩人の語り口ではまるでマルディアスを救うために生まれ運命に導かれ集った救世主のようだ。
「だいたい、『マルディアスの神々は英雄たちに味方した』って…私たちが生き延びられたのはあなたのおかげでしょう?…エロール」
「それは私たちだけの内緒です。それに、多少話を大きくした方が聞き手に喜んでもらえるのですよ。」
吟遊詩人は人差指を立てて口元にあててみせる。クローディアはそのおどけた仕草に呆れる他になかった。
クローディア達は、本当はサルーインの最期の一撃で全滅する運命だった。しかしそこで全能の神エロール―吟遊詩人の姿を装ってマルディアスに降り立っていた―が持てる力を振り絞り、五人がサルーインに殺される刹那に未来へと時間転移をさせたのだ。その結果エロールは神の力を使い果たし、ただの人間と同じ存在になってしまった。しかし当のエロールはそんなことは気にしていないらしい。むしろ神としての責務もなくなったことを幸いに、一介の吟遊詩人として余生を楽しんでいるようだ。
「…でも、曲は本当に素敵だと思う。…迷いの森を思い出す、優しい曲だわ」
クローディアは苦言を呈しながらも、久しぶりに吟遊詩人と話ができたことを喜んでいた。動物たちと暮らしていた時期が長かったため、彼女はまだまだ人付き合いが得意ではない。そのため感情を素直に相手に伝えることも苦手としていた。
しかし、クローディアがバファル帝国に戻ってから詩人と再会した今日まで、本当に心が休まる暇がなかった。いくら正当な後継者であっても、施政者としての教育をまるで受けてこなかった彼女はまだまだ君主として未熟者だ。毎日が勉強であり、試練だった。自分で選んだ道とはいえ、迷いの森での暮らしを懐かしく思ってばかりいた。
「迷いの森ですか…そういえば、今でも時々シリル神とエリス神の巫女として、迷いの森で神託を受けていると聞きましたが…。」
「ええ…私は弱いから、シリルやエリス、それに森の動物たちの力を借りているの。」

どうして突然帝国に戻り自らが皇女であることを宣言した彼女を、帝国の民が大きな反発もなく受け入れたのか。民にとっては慕わしいフェル皇帝の一人娘が無事に生きていた、しかもサルーインを倒し世界を救ったということだけでも十分喜ばしいことではあった。それに、彼女が森の番人として動物たちや森の神々と交流できるという神秘性が後押ししたのだ。彼女がその神秘の力で、破壊神の率いる魔物たちに襲われ疲弊した帝国を復興に導いてくれると、多くの民は信じている。
しかし、その力にいつまでも頼ってはいられないということは、クローディア自身が一番理解していた。今はおとなしくしているローバーン公派も、また以前のように皇位を狙い内乱を引き起こすかもしれない。その時に父を守り、内政の秩序を保つのは自分の役割だ。来るその日までに、施政者としての知識や力を身に着けていなければならない。故郷や慣れ親しんだ家族に頼ることはたやすいが、頼ってしまえばそれだけ自分の未熟さへの焦りも生まれる。
詩人の作った歌は、そんな彼女のさびしい心に寄り添い、沁みこむような優しい旋律だった。

「では、時間をとらせて済みませんでした。お体に気をつけて。」
「あなたも元気でね。…来てくれて、ありがとう。」
詩人が立ち去ってしまうと、広間は再び寒々しいほどの静寂に包まれた。
本当に、ここまで長かった。今日までは過去に浸るような暇もなかったのだが、詩人の語りを聞いたことで改めて脳裏によみがえってくる。
しかし、クローディアには振り返っている時間は与えられないのだ。
「クローディア様!」
先ほど閉じられたばかりの大扉が、ノックもなしにばたんと開かれた。この宮殿内でクローディアに対してこのような気易い行動をとれるのは一人しかいない。
「…様ってつけるの、やめてって言ってるじゃない。」
「いやいや、すみません!もう癖になってしまってまして!」
銀色のつんつんした髪をわしわしと掻きながら、青年は子犬のような笑顔を振りまいた。思えば、まだ不慣れな宮殿内でも過ごしやすく感じるのは、ともにサルーインを討伐した仲間が側近としてついていてくれているからだろう。
「先日も確認しました通り、これからアルベルト様との面会を入れています。そろそろ出発しましょう。」
ジャンというその銀髪の戦士は、クローディアが外の世界に出るきっかけとなった人物だった。彼は迷いの森にフェル皇帝の子女がいるという噂を確かめるべく足を踏み入れ、道に迷った挙句に魔物に襲われてしまった。そこを助けたのが他でもないクローディアだったのだ。その彼が「お礼がてら自分の住むメルビルを紹介する」と誘ったことをきっかけに、クローディアは森の外に出て、旅に出ることになった。ジャンが急な任務が入ってしまい、その約束を果たすのは少し後になったが、それから二人は破壊神サルーインを倒すまで行動を共にすることになる。
「アルベルト様とお会いするのは本当に久しぶりですね、あの旅以来になりますから」
サルーインを倒した後、ただの皇帝親衛隊兵士だった彼には褒章が与えられ、クローディア直属の護衛という重役に就いた。英雄として認められ人々のあこがれの存在となった今も、落ち着きのなさとひょうきんさに全く変わりはないのだが。
「そんな思い出話をしている余裕があればいいのだけど。…行きましょう。」
「はい!」
クローディアは深く息をつくと、しゃんと立ち上がる。明るく能天気に振舞っていたジャンも、その所作だけで空気が張り詰めるのを肌で感じ取り、少しだけ表情を固くした。

サルーインを倒してハッピーエンド、なんて吟遊詩人の物語の中だけだ。現実の自分たちにはまだ結末など訪れない。このマルディアスには、まだまだ乗り越えなければならない課題が残されているのだ。
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寺島ロシカ

Author:寺島ロシカ
テイルズオブデスティニー2(ジュハロ)、ロマンシングサガ・ミンストレルソング(グレクロ)、ドラッグオンドラグーン2(ノウェエリ)、ブレスオブファイア5(リュウリン)とかそんな話ばっかり。
鳥海浩輔さん、千葉一伸さん、皆口裕子さんの三柱神を崇め奉る。

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